読書の日記

書き手のくせにあまり読書家ではない私ですが、分野を問わず、読んだ本について感想を綴っていきます。

厳しい時代に戦うサラリーマンを描く-『ドキュメント サラリーマン』

昭和54年から日本経済新聞で連載していたシリーズを単行本にまとめたものです。

確か、9冊ほど出版されたと思います。

私は古本屋で買った4冊までをイッキに読みました。

高度経済成長から低成長時代に移り、サラリーマンを取り囲む環境が厳しくなり始めた時代を描いています。

単身赴任、倒産、転職、定年など、かつて第一線で活躍した現役社員が逆境にどう立ち向かっているか、実際の企業を取材したドキュメント・タッチでレポートしています。

主人公はあくまでもサラリーマン個人というのが特長でしょう。

匿名とはいえ、かなりリアルに心象まで踏み込んで描いているのことに引き込まれます。

1冊目では、自分で部は持っていると自負する部長が、会社が制度化した管理職研修に参加する話があります。

研修の合間に職場の状況が気になり、部下に電話をしてショックを受けるんですね。

「『オレがいなくちゃ動かない』はずの部が、何の支障もなく動いていた。会社人間、働き中毒と呼ばれて恥じない部長たちにとって、この発見は、自己否定にも等しい衝撃だった」

確固としていたはずの自分の存在意義に自信がなくなったとき、どうすればよいのでしょう。

それが生き方のすべてを占めていた仕事だったら…

仕事とは何なのかを考えさせられるシリーズです。

 

ドキュメント サラリーマン (新潮文庫)

ドキュメント サラリーマン (新潮文庫)