読書の日記

書き手のくせにあまり読書家ではない私ですが、分野を問わず、読んだ本について感想を綴っていきます。

『青年社長』なぜブラック企業の象徴に

続編ではありません-『青年社長』

 

青年社長〈上〉 (角川文庫)

青年社長〈上〉 (角川文庫)

 

 

私が好きな経済小説家の高杉良の作品です。

主人公は、

あのワタミの創業社長である渡邉美樹氏。

創業に至るまでの様々な出来事が緻密な取材によって描き出されています。

略奪婚だったことなど、プライベートなことまで書かれていることには驚きますが。

先日、過労自殺した新入社員の両親が渡邉氏ら会社側に懲罰的慰謝料を含む約1億5300万円の損害賠償を求める訴えを東京地裁に起こしたことが報じられました。

今や

ブラック企業

の代表格のように言われるワタミですが、

これは彼が創業まで過酷な生き方をしてきたことと無関係ではないと思います。

実は、ワタミが居酒屋事業に本格的に取り組む前、

唐変木」というお好み焼きのデリバリー事業を始めた頃、

わずか数人で彼の自伝的セミナーを聴いたことがあります。

そこでは、この本には書かれていないことにも触れていました。

創業社長は想像を超える苦労をしてきていることが少なくありません。

それを社員に求めるか、否か。

これが創業社長を分けるひとつの指標になるのではないでしょうか。

いずれ、続編である、

『新 青年社長』も読んで見たいと思います。

 

『現役・東大院生の速読術』

『現役・東大院生の速読術』という速読のマニュアル本を読みました。

東京大学大学院(環境工学系)の現役東大生、原田考太さんと速読研究会の共著となっています。

「1週間で50冊読めた!
50未満だった偏差値が3ヵ月で70を突破した!
1ヵ月でTOEIC950点取った!」

という触れ込みが目に飛び込んできました。

1週間50冊ということは、

1日7冊ちょと。

スゴイですね。

第1部 人生を切り開く速読術

第2部 誰でも簡単速読トレーニング

で構成されています。

もちろん、本題は第2部です。

<準備編1>集中力を高める脳内リラックス法
<準備編2>視野を広げる眼筋トレーニング など

<基本編1>知りたい内容は"目次読み"でつかめ
<基本編2>マンガ読みで本を"見る" など

<実践編1>視野を広げて「速読眼」をつ<る
<実践編2>究極の視点移動を目指す など

<応用編1>新聞速読テクニック
<応用編2>ビジネス書速読テクニック

大事なことは、

何について書かれているのか、まず把握することだと思います。

目次を読むのは、そのために不可欠ですね。

私の言葉で言うと、「森」をとらえ、個々の「木」を見ていく、となります。

著者は、

「章立てとなる大見出しのみを、2、3回繰り返し見て、その本の全体の構成をつかんでください。それから、中見出し、小見出しへと項目を把握していきます。」

と書いています。

そして、

重要なのが、「漢字」だと。

漢字を拾い読みすれば、自然に速読ができるというわけです。

実は、

私は大昔、ユーキャンの「速読講座」を受講したことがあります。

その後、アメリカのペーパーバックでも速読の本を読みました。

ユーキャンの方法論と非常に似ていました。

ですので、速読にはかなり自信があります。

ユーキャンの通信講座は、今回読んだ本のような目次読みや漢字読みについては触れていません。

目視に関するテクニカルな技術を身につけさせるものでしたね。

正直、コンタクトレンズを装着しているときは無理です。

今回読んだ方法論は、確かに誰でもできますし、コンタクトをしていてもできます。

私も書店で立ち読みしているときは、無意識にやっていました。

受験勉強では早い時期に身に付けたいものです。

ところで、

昔と違ってネット環境が整った今では、通信教育も大きく様変わりしていますね。

スカイプで生徒とやりとりするなんて驚きました。

ショウイン塾

 

 

 

 

 

 

『7つの習慣名言集』

 日々、成功習慣の定着に-『7つの習慣名言集』

7つの習慣 名言集

7つの習慣 名言集

  • 作者: スティーブン・R.コヴィー,Stephen R. Covey,ジェームススキナー,川西茂
  • 出版社/メーカー: キングベアー出版
  • 発売日: 1999/04
  • メディア: 新書
  • 購入: 3人 クリック: 5回
  • この商品を含むブログ (2件) を見る
 

 いまさら言うまでもなく、

あのスティーブン・R・コヴィー の名著

『7つの習慣』のダイジェスト版です。

 

『7つの習慣』は、

ウォール・ストリート・ジャーナル紙から、
ビジネス書として20世紀で最も影響を与えた本と評されています。

 

7つの習慣とは、

人生を成功に導く成功哲学であり、

・第1の習慣)主体性を発揮する

・第2の習慣)目的を持って始める

・第3の習慣)重要事項を優先する


・第4の習慣)Win-Winを考える

・第5の習慣)理解してから理解される

・第6の習慣)相乗効果を発揮する

・第7の習慣)刃を砥ぐ

があります。

 

アリストテレスが、

「人格は繰り返す行動の総計である」

と言ったように「習慣」とすることに意味があります。

 

名言集は、その意味で日めくり形式にしたのでしょう。

 

ただし、大前提として『7つの習慣』を熟読し、

第2の習慣で勧めている自らの信条、

「ミッションステートメント

を書き上げるなど主体的に取り組んでいないと効果は薄いと感じました。

 

 

 

 

 

厳しい時代に戦うサラリーマンを描く-『ドキュメント サラリーマン』

昭和54年から日本経済新聞で連載していたシリーズを単行本にまとめたものです。

確か、9冊ほど出版されたと思います。

私は古本屋で買った4冊までをイッキに読みました。

高度経済成長から低成長時代に移り、サラリーマンを取り囲む環境が厳しくなり始めた時代を描いています。

単身赴任、倒産、転職、定年など、かつて第一線で活躍した現役社員が逆境にどう立ち向かっているか、実際の企業を取材したドキュメント・タッチでレポートしています。

主人公はあくまでもサラリーマン個人というのが特長でしょう。

匿名とはいえ、かなりリアルに心象まで踏み込んで描いているのことに引き込まれます。

1冊目では、自分で部は持っていると自負する部長が、会社が制度化した管理職研修に参加する話があります。

研修の合間に職場の状況が気になり、部下に電話をしてショックを受けるんですね。

「『オレがいなくちゃ動かない』はずの部が、何の支障もなく動いていた。会社人間、働き中毒と呼ばれて恥じない部長たちにとって、この発見は、自己否定にも等しい衝撃だった」

確固としていたはずの自分の存在意義に自信がなくなったとき、どうすればよいのでしょう。

それが生き方のすべてを占めていた仕事だったら…

仕事とは何なのかを考えさせられるシリーズです。

 

ドキュメント サラリーマン (新潮文庫)

ドキュメント サラリーマン (新潮文庫)

 

 

男は一生、好きなことをやれ

今回は、『男は一生、好きなことをやれ!』を読みました。 

出版元である三笠書房の内容説明では、

自分を主体にした生き方を見つけ、本当にやりたいことを実現するために!絶対、忘れてはいけない33のこと

とあります。

著者の里中李生(さとなか りしょう)氏は、ノンフィクション作家、写真家、競馬ジャーナリストという多彩な方です。

しかし、そこに至るまでにはいろいろご苦労されています。

お父上の転勤で友人ができず、中学時代に拒食症を病み、高校時代には新造神経症で入院生活。

そして中退。

20歳で漫画家を目指して上京し、アシスタントなど様々な職業を経験されての今なんですね。

 

  

実は、私もかなりかぶるところがあります。

親の転勤で幼稚園2校、小学校3校。小学校時代、大阪から東京に引っ越しました。

いきなり関西弁から標準語は無理ですよ。

当然、イジメの対象になります。

私の場合は、喧嘩が強くなりました。
言葉もすっかり標準語が使えるようになりました。
(母親が関西人なので実家ではいまだにバリバリの関西弁です)

あと、やりたいことのなかには漫画家もありました。

中学時代には、少年ジャンプの「赤塚賞」に応募するほど、のめり込んでいたものです。

社会人になってからは推理小説の公募に応募していました。

ところが、モノになっていないわけです。
(童話では賞をいただきましたが)

その理由はこの本を読めばわかります。

とことん、勝負していなかったんですね。

それと、本当に好きではなかったのかも…

冒頭、著者は、

「今の仕事は好きか?」

と問います。

そして、

「好きなら、その仕事を続けるべきだ」

と。

この判断がつかないのが一番困ります。

私の場合、
叔父が売れない画家をしていて、その影響もあってか、一番、成績がよいのが図工・美術でした。

ただし、親としては同じような道は歩ませたくなかったようで、

公務員になりなさい、

が口癖でした。

中途半端に勉強ができたので、大学卒業後は、
公務員になったのですが…

半年でドロップアウト

その後は様々な職業を経ています。

「今の仕事は好きか?」

この問に対する答えは、

好きな仕事もあれば、そうでない仕事もある、

と答えるしかありません。


ところで、この本の出版元、三笠書房さんには、

思い出があります。

シンクタンクの研究員をしていたとき、

当時の社長さんを取材しました。

印象に残っているのは、大変な倹約家だったこと。

エレベーターは社員には使わせない、ことのほか、

メガネを拭くときは、ポケットティシュ1枚を3枚に切って、3回使うんだとおっしゃっていました。
(目の前でやって見せてくれました!)

なぜか気に入ってくださり、転職のお誘いも受けました。

とても懐かしい昔のお話です。

 

 

サラリーマンの悲哀を感じる-『白い叛乱』高杉良

著者は、化学業界の専門誌の記者時代に小説を書き始め、小説家として一本立ちしています。

『金融腐蝕列島』をはじめ、映画化された作品もあり、今や企業小説という範疇を超えて、経済小説の大家と評価すべき作家です。

この作品は、彼が自ら肝炎で入院した経験を踏まえ、作家として2作目に書かれたものです。

 

白い叛乱―製薬プロパーたち (集英社文庫)

白い叛乱―製薬プロパーたち (集英社文庫)

 

 製薬会社の若い営業社員が完治の見込みのない肝炎にかかり、休業を余儀なくされます。

入院中の彼の目を通して、製薬業界と病院の癒着の構造、医師と営業社員の理不尽な関係が巧みに描かれていることが、企業小説家として面目躍如たるものがあります。

冒頭、開業医をスナックで接待する営業社員が、酔った院長に入れ歯を漬けたお酒を飲むように強要されるシーンはかなりショッキングです。

著者は、緻密に取材をすることで有名で、この箇所は決して創作ではないんでしょうね。

時代背景は今から30年も前ですが、企業とサラリーマンの関係は、基本的には変わっていないのではないでしょうか。

就職ではなく就社は今も昔も同じですし、「ブラック企業」や「追い出し部屋」が表立っていなかっただけだと思います。

小説では、将来有望な若い社員も、会社にとって役に立たなくなったときは切り捨てられる、という理不尽さが読み手の心をつかみます。

主人公が、仕事ができてもどこか頼りなげな好青年であるだけにそうなんですね。

経済学では、人間・組織の行動原理は、「効用の最大化」が基準だと説明しています。

会社は利益を出して、出資者である株主に配当するのが第一の存在意義です。

個々の社員は単なる手足に過ぎない。

こう考えると、とてもわかりやすいと思います。

しかし、組織と異なり、個々の社員には感情もあれば家族もいます。

サラリーマンは会社と自分の関係をどう考えるべきか、考えさせられる作品です。

最後に主人公が、入院中、厳しいながらも親身に看護してくれた看護師に恋愛感情を告白し、受け入れられるシーンには救われました。